映画『テノール 英雄の詩(うた)』レビュー

ストーリー

本作は、テノール歌手として輝かしいキャリアを持ちながらも、自身に課した高い理想と現実のギャップに苦しみながら成長していく主人公・レニ・ルッソの半生を描いたドラマ映画である。

若くして主要オペラハウスで公演する機会に恵まれたレニは、その才能に惚れ込んだ指揮者の大物と共に活躍し、人気を得ることになる。しかしその反面、人間的な成長と共に、自分自身を見つめ、試行錯誤しながら“自分自身と戦う”日々を過ごすことに。その旅路の中で完成されたレニの歌声からは、人々を魅了し、今もなお多くの人々に愛され続けている。

演出・映像

映像面においては、建築の壮大さや自然の美しさが見事に描かれており、重厚感もあるが、見どころが多い。レニの青春時代にはパリを舞台に、今となっては貴重となった植民地時代の邸宅や、海外的にはあまり知られていないフランスの田舎の風景が映し出される。

レニが歌うオペラシーンも特筆すべきもので、その神秘的な歌声と美しい音楽に包まれた物語に感動が広がる。音楽を聴きながら、美しい映像美を堪能できる。

キャラクター

主人公・レニを演じるイタリア人俳優のペペ・リナ・マンフレディは、見事に役作りを決めている。レニの苦悩を、重たい表情や狂気じみた激情的な演技で見事に表現している。また、この映画ではレニ以外にも、指揮者や音楽家、家族や関係者など多数のキャラクターが登場し、それぞれにドラマチックな物語を展開している。

総評

全編にわたって描かれるレニの人生には、苦悩や挫折、成長や希望があり、それによって培われた美しき歌と熱いドラマが交差する。特に、オペラシーンではその素晴らしい歌声に涙を誘われることだろう。

人々を魅了し続けるテノール歌手の少年から、天才的な歌手として世界的に活躍する大人へと成長する過程を描く一編は、音楽ファンじゃなくても楽しめる。歌を通じて、人生を生きることの重さ、大切さが胸に迫る映画である。

この映画を見たら、音楽がもっと好きになるはずだ。


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